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≪物理学者「寺田寅彦」≫≪随筆「天才と国防≫≪夏目漱石の門下≫≪情報や本舗≫

 

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大正から昭和にかけて活躍した「寺田寅彦」という物理学者  夏目漱石の門下であったことでも知られ、『吾輩は猫である』に登場する理学者の水島寒月、『三四郎』に登場する物理学者の野々宮宗八は「寺田寅彦」がモデルだと

 

研究者として地球物理学、気象学などに取り組み、一方で執筆活動も行った「寺田寅彦」は多くの随筆を残しました 災害に関連するものも多く、今日でもたとえば『天災と国防』(講談社学術文庫)という1冊に手際よく収められ読むことが出来ます。

大正、昭和初期の考察ですから、現代からすればある種の違和感、諸々の事情や状況の違いがありますが、モノの見方、考え方の本質には大いに頷かされます。とくに天災と「人間の宿命」についての示唆に富んだ考えは豊かな視点を与えてくれます。

 

過去を振り返れば、日本は繰り返し地震、津波、台風などの自然災害に遭ってきました。今回の台風19号を気象庁は「狩野川台風」になぞらえて警告を発しましたが、

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昭和33(1958)年9月に襲来したこの台風は、伊豆半島と関東南部に記録的な豪雨をもたらし、静岡県と関東地方で河川の氾濫、堤防の決壊を起こし、全国で死者・行方不明者1269人を出しました(台風の名称はこの時決壊した狩野川からきています)

「寺田寅彦」は、昭和9(1934)年9月の「室戸台風」襲来2カ月後にこう書いています。

 

 

                           

地震津波台風のごとき西欧文明諸国の多くの国々にも全然無いとは言われないまでも、頻繁にわが国のように劇甚な災禍を及ぼすことははなはだまれであると言ってもよい。

 

わが国のようにこういう災禍の頻繁であるということは一面から見ればわが国の国民性の上に良い影響を及ぼしていることも否定し難いことであって、数千年来の災禍の試練によって日本国民特有のいろいろな国民性のすぐれた諸相が作り上げられたことも事実である

(天災と国防)

 

室戸台風は、その名のとおり高知県室戸岬に上陸後、近畿地方、新潟県を通って東北地方を横断し、その間本州、四国、九州各地に甚大な風水害を起こし 死者 2702人、行方不明者 334人を数えました。



住宅損壊 約9万3千棟、船舶被害約2万7600隻のほか、高潮が発生した大阪湾沿岸の工業地帯にも大きな損害を与えました。被災して間がないにもかかわらず

災禍の頻繁であるということは一面から見ればわが国の国民性の上に良い影響を及ぼしている

とは何事か、と思われるかも知れません。被災した人々の困窮、苦悩を「寺田」はわかっているのか、と。「寺田」はそうしたことに理解や同情がなかったのではありません。〈数千年来の災禍の試練〉

という日本列島に生まれ落ちた者の宿命を前向きに受け止め、そこに日本人の“生き筋”を見出そうとしているのです「寺田」は次のように述べます

 

日本のような特殊な天然の敵を四面に控えた国では、陸海軍のほかにもう一つ科学的国防の常備軍を設け、日常の研究と訓練によって非常時に備えるのが当然ではないか

自然災害の発生を前提に対応機関を設け、社会制度を整えたり、社会全体の価値観の共有、行動を規定したりすることが必要だというわけです。「寺田」は、室戸台風の翌年(昭和10年)の大晦日に没しました。日本はその後も地震や台風などの災禍に遭い続けます。

 

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人類が進歩するに従って愛国心も大和魂(やまとだましい)もやはり進化すべきではないかと思う。砲煙弾雨の中に身命を賭して敵の陣営に突撃するのもたしかに貴い日本魂(やまとだましい)であるが、○国や△国よりも強い天然の強敵に対して平生から国民一致協力して適当な科学的対策を講ずるのもまた現代にふさわしい大和魂の進化の一相として期待してかかるべきことではないかと思われる。天災の起こった時に始めて大急ぎでそうした愛国心を発揮するのも結構であるが、昆虫や鳥獣ではない二十世紀の科学的文明国民の愛国心の発露にはもう少しちがった、もう少し合理的な様式があってしかるべきではないかと思う次第である    (天災と国防)

 

こうした「寺田」の言葉はその後、我が国の「防災」に活かされたのか、活かされなかったのか――戦後最大の台風被害とされるのは昭和34(1959)年9月の「伊勢湾台風」です。前年の「狩野川台風」を超える被害をもたらしました。

 

≪三重県と愛知県をはじめとする中国地方以東の 39都道府県に及び、死者 4697人、行方不明者 401人、負傷者 3万8921人、住家全半壊 83万3965棟、床上・床下浸水 36万3611棟。特に伊勢湾沿岸では高潮が平均潮位より 3.9m高くなり、木曽川河口部一帯に浸水、三重県桑名市から名古屋市西部にかけた一帯は泥海と化し、都市機能はまったくの麻痺状態に陥った≫・・・・(ブリタニカ国際大百科事典より)

 

高度経済成長期の台風禍は、秩序を欠いた土地造成の是正やゼロメートル地帯の防水対策の必要性を強く訴えることになり、2年後(昭和36年)、国の防災対策の基本である災害対策基本法の制定につながりました。

寺田はまた 次のように

わが国の地震学者や気象学者は従来かかる国難を予想してしばしば当局と国民とに警告を与えたはずであるが、当局は目前の政務に追われ、国民はその日の生活にせわしくて、そうした忠言に耳をかす暇がなかったように見える

 

と書いてから27年後です。自然の力は往々人間が考える備えを容易く超えます。惨禍に遭う度になにがしかの教訓を導き出し、その後に備えようとしても、天災そのものを止ませることは出来ない。

寺田は「災難の進化論的意義」といった問題意識から、〈古今東西を通ずる歴史という歴史が

ほとんどあらゆる災難の歴史〉で、〈人間は災難に養いはぐくまれてきた〉・・・・と述べます。

 

ちょうど野菜や鳥獣魚肉を食って育って来たと同じように災難を食って生き残って来た種族であって、野菜や肉類が無くなれば死滅しなければならないように、災難が無くなったらたちまち「災難饑餓(きが)」のために死滅すべき運命におかれているのではないかという変わった心配も起こし得られるのではないか。

 

          (中略)

 

植物でも少しいじめないと花実をつけないものが多いし、ぞうり虫パラメキウムなどでもあまり天下泰平だと分裂生殖が終息して死滅するが、汽車にでものせて少しゆさぶってやると復活する。このように、虐待は繁盛のホルモン、最難は生命の酵母であるとすれば、地震も結構、台風も歓迎、戦争も悪疫も礼賛に値するのかもしれない。〉 (昭和10年7月「災難雑考」)

 

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日本の国土などもこの点では相当恵まれているほうかもしれない。うまいぐあいに世界的に有名なタイフーンのいつも通る道筋に並行して島弧が長く延長しているので、たいていの台風はひっかかるような仕掛けにできている。

また大陸塊の縁辺のちぎれの上に乗っかって前には深い海溝を控えているおかげで、地震や火山の多いことはまず世界じゅうの大概の地方にひけは取らないつもりである。

その上に、冬のモンスーンは火事をあおり、春の不連続線は山火事をたきつけ、夏の山水美はまさしく雷雨の醸成に適し、秋の野分は稲の花時刈り入れ時をねらって来るようである。日本人を日本人にしたのは実は学校でも文部省でもなくて、神代から今日まで根気よく続けられて来たこの災難教育であったかもしれない

 

日本人は国土の地理的与件による避け得ない災難の数々によって鍛えられ、まさに〈災難を食って生き残って来た種族〉・・・だというわけです。これは実際に被災した人々への支援や復興の具体論ではなく、感情としてどう寄り添うかという話でもありません。

そこから離れて、日本列島に住む我々の宿命と、それに向き合う心構えを論じたものです。豪胆と云うほかありません。我々が自然の恵みと感じるものは、同時に我々への脅威ともなり得る その折り合いをいかにつけ、この列島で生きてゆくか。自然の猛威に対する人間の文明力――際限のない繰り返しの中で私たちは生きてゆくしかない。安全性を高める努力をいかに注いでも、完全なる安心感は得られず、また完全に安全な状態もない 「寺田」はこう述べております

 

 

〈文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向がある〉

科学の力で捻じ伏せるような防災の考え方に潜む落とし穴についても私たちは承知しておかねばならないでしょう そして「寺田」は“災難雑考”をこう結びました(これに日本人を当てはめるとどうなるか)

このまとまらない考察の一つの収穫は、今まで自分など机上で考えていたような楽観的な科学的災害防止可能論に対する一抹の懐疑である。この疑いを解くべきかぎはまだ見つからない。これについて読者の示教を仰ぐことができれば幸いである

 

――日本人がこの列島に住む限り――避けては通れない宿命のようなものである、ということです。そうであるならば、豪胆に、大和魂を発揮してゆくしかありません。具体論は、そうした魂を基に論じられるべきものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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